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孤高のピアニスト

孤高のピアニスト

田尻洋一はなぜ「孤高のピアニスト」と呼ばれるのか。

どんな芸術の世界にも家元制度や門下の集まりは存在する。どんな会社や団体にもルールや価値観の縛りがある。そこには抗えない圧力があり、利潤追求のビジネスがある。それはとても狭い世界だ。時には芸術よりもお金の方に高い優先順位を与える。クラシック音楽の世界も例外ではない。

田尻洋一は組織に属していない。組織に属していないということは、権威に取り込まれないということ。権威に取り込まれないということは、しがらみがないということ。自由であるということ。自分自身の意志を邪魔されないということ。

田尻洋一には信念がある。クラシック音楽が人間に与える感動は何百年たっても変わらない。その魅力は決してこの先も色あせることはない。しかし新しい娯楽が次々と生まれ個人の好みが多様化している現代において、クラシック音楽の認知度は高くはない。多種多様な音楽のジャンルのなかでクラシック音楽が将来シェアを伸ばすのは難しいということも分かっている。だからこそ、クラシック音楽の生演奏にこだわり続ける。生の音が鼓膜を通して心の奥底に響いていく感覚は、録音では到底かなわない。その音づくり、生の音に触れられるコンサートに今後もこだわり続ける。クラシック音楽の真の芸術性を軽視する商業主義には距離を置く。自分自身の理想のピアニズムに一切の妥協を許さない。そしてその為の努力を惜しまない。アウトサイダーとして生きていく覚悟がある。それが本物のプロフェッショナル。それが「ピアニストが恐れるピアニスト」田尻洋一だ。

田尻洋一は群れない。ピアニストは皆ライバルだから、そう言い切る。たとえそれが師弟関係にあったとしても。